この作品は、甲府市の甲府駅北口広場に面した文化会館の並びに位置する県立図書館である。街中の賑わい創出拠点としての位置づけや静寂な閲覧機能とイベントや観光拠点としての機能、さらに市民の通り抜けや自由に憩え親しみある場を併せ持ち一体的に利用のできる新しい形態の図書館、「情報のフードコート」をテーマに計画が始まった。 そのため設計者は、地元で馴染みのある「ぶどう籠」、「ぶどう棚」をモチーフに鉄骨フレームで36m×72mの三層吹抜けの大架構によるガラス張りワンボックス空間とRC造の四層コアを組合せで成立させた。外観は、格子状に編まれた鉄骨フレームで壁面緑化されさたカーテンウォールがぶどう籠を意識させるし、RC壁に嵌め込まれたクラッシュガラスが水晶をイメージさせて地元らしさを高揚させている。 屋内では屋根を鉄骨トラスに帯状の下弦材を技術的な工夫を加え、天井いっぱいに弧を描きぶどう棚が出現している。その上、屋根をノコギリの刃のようにし垂直北面から自然採光と傾斜南面の屋根に太陽光発電パネルを載せ、外周壁ガラス面と共に屋内に豊かで柔らかい自然光が降り注ぐ屋内環境となっている。 全体は自由に会話やワーキングのできる場や利用者が気軽に本と接し、交流し合うといった場が創出されている。サイレントルームも用意され様々な利用のシーンに対応できる仕掛けとして一体化が実現している。省エネルギーにも配慮され、開館一年あまりで100万人に達し、市民にも支持された施設は、新しい図書館に一石を投ずるものと期待が持て、周囲のまちなみに調和した作品として高く評価され最優秀賞に選ばれた。
(福島 賢哉) |