市街地にあるキャンパス内に分散していた図書室を統合し、知と人の交流がうまれる学生の居場所づくりと広場の再編をめざした計画である。年代と意匠の異なる建物が建ち並び、雑多な印象が否めなかった既存キャンパスであるが、既設建物とは異なる角度をもつ平行四辺形の平面形の図書館配置を軸に、大学1,2年生の若い感性を迎え入れるにふさわしいキャンパスの顔として、正門前の広場が再構成されている。 平行四辺形がもたらす斜め性は、構造計画、内装や家具配置において熟慮され、空間形成に生かされている。書架間の通路を進み、本の背と書架表示が連続して立ち顕れる風景に遭遇すると、「本の力を引き出す」ことへの建設チームの信念を強く感じることができる。 フラットな床を積層した機能的な計画の中にも、きめ細やかに配慮された内装計画により、キャンパスの入り口側から建物奥へ、1階から4階へ、賑わいから静寂という空間の質のグラデーションが形成されている。図書スペースは、外観の特徴となるライトリフレクターにより心地よい自然光に包まれ、外部環境への視線の抜けが確保されている。建築から家具、大から小スケールに至るまで、学生、職員の意識と行動の自発性を誘い出す様々な工夫が実現されており、施設を生き生きと利用する学生たちの様子もうかがえた。 既にある施設群の中で新たな建築行為は何をなしうるのか、都市空間更新における課題にも似た問いに対して深い情熱と高い能力をもって取り組まれ、図書館という機能を超えたキャンパスにおける都市施設を実現された点を高く評価され、優秀賞とみとめられた。
(國分 昭子) |