スカイツリーが開設され、押上駅前はスカイタウンとしてにぎわいを見せている。以前東武鉄道の引き込み線とされていた長三角地に墨田区営の駐輪場が計画された。鉄骨2階建ての駐輪場は、一般的には鉄骨躯体がむき出しの2枚のスラブがあり、外皮をルーバーなアドで化粧する程度のものだが、ここではそれを緑の丘と見立て、自転車も歩行者も緩やかなスロープで東西?に上り下りする丘の公園と設えられている。
幾つかのデッキテラスが休憩の場をつくり、夏には恒例の花火も鑑賞できそうだ。
全てが三角形のモチーフの鉄骨とPC版のシステム設計で造られている。平面形は三角形の鉄骨梁とPC版で構成され、中央の車路上部にトップライトが設けられ、光と通風・換気がとられている。このようなシステム建築は、一部のシステムに乗らない穴や角度の変化などによって他の部分にひずみが生じ、標準解だけではできない苦労を伴うが、ここでもシステム設計の構造や現場の苦労は大変だったと思う。
鉄骨の空間であるが、ぎすぎすした感覚は光と緑によってなじんでおり、設計者の苦労がしのばれる。屋上の保水レンガ球や緑化による蒸発潜熱によって夏の温度を平準化することにも成功している。この屋上の仕組みは一重の薄い層によることや、ナイロン系のネットで支えていることなど、耐久性や厳しい気候に耐えられるかなどの課題もあるが、若い設計者のチームが新しいシステムに挑戦し、苦労をいとわず、計画論的にも難しい課題を一つの作品に仕上げたことは今後の期待を含めて賞に値するものと評価したい。
(中村 勉) |