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女性からみた建築士事務所運営
女性建築士が活躍する職場づくりに向けて

女性建築士の活躍の場を業界としてもっと広げていくために必要な取り組みとは何でしょうか。
東京都建築士事務所協会では、「女性からみた建築士事務所運営」をテーマとする懇談会を2020年2月に開催しました。
女性の建築士事務所経営者や事務所に勤務する女性に加え、スパイラルアップ事業ワーキング(WG)、働き方改革推進WGの委員のほか、オブザーバーとして社労士、人事マネジメントの専門家を加えた総勢25名で、女性の活躍推進に向けた議論が行われました。
懇談会のワークセッションでは、女性視点での働き方改革と業務環境の改善など、さまざまな課題についての提言がありました。その一部をご紹介します。

女性建築士が考える
「女性の活躍推進」のポイント

建築設計業界では、一級建築士合格者の女性比率が20%強であるのに対し、当協会に所属する女性管理建築士が3%に留まっており、業界として女性の活躍や登用が進んでいないという現状があります。
懇談会では、こうした現状への認識をふまえ、議論をスタートし、女性視点での職場づくり、フラットな男女参画の働き方の環境づくり、男性の意識改革などが、ワークセッションテーマとして取り上げられ、A・Bの2班に分かれて実施しました。
女性参加者から寄せられた女性の活躍推進についての課題とその対策について、以下のような提言がありました。

ワークセッションで女性から寄せられた建築士事務所運営の課題と対処方法・工夫

テーマ 課題 工夫
働き方
課題
  • 仕事や業務を指示する側は働き方の課題に取り組んでいて、指示される側は問題を抱えている。
  • 独身の人に仕事の負担がきて、不公平感が生じている(月収制の問題。)
工夫
  • ITを駆使する(スマホ、在宅、クラウド)
  • 時差出勤、時短、病児保育などの制度活用
  • 夫婦協力して、24時間をデザインする。
  • 子育ての時こそ、地域に顔が売れる。地域の力を借りて一緒に地域に育ててもらう。
事務所経営
課題
  • 1人の事務所では、働き方やタイムコントロールが難しい。
  • 考え方は人それぞれ。制度ひとつつくれば、みんな満足というわけではない。
工夫
  • 3人いれば仕事のやりくりがしやすくなる。
  • 個人事務所同士が連携を図る仕組みづくりができると良い。
社会のあり方
課題
  • 男性の意識改革が必要(特に年配者)。
  • 女性にも「女性だから自分がやる」という固定観念を持っているケースが多い。
工夫
  • 男女関係なく、できる方がやればいい。
  • 若い世代は実現している。
  • 「違い」「多様性」を理解することが重要。
建築士事務所における
建築士の職能・報酬
課題
  • 会社を運営するために過剰な労働を強いる。
  • 団体に属さなくても営業できることが全体価値を下げている。
  • フリーの犠牲が大きい。今の業界の環境では若い人に独立を勧められない。
工夫
  • 設計者の社会的価値、報酬が上がらないと改善しない。
  • 低額入札を禁止(下限値設定)すべき。
  • 若い人の独立支援が必要。

建築士だからこそ実現できる
先進的な
「働き方」に向けて

懇談やワークセッションを通じて、建築設計業界に携わる多くの人が感じたのは、「みなそれぞれの環境において、さまざまな課題や障害を上手く乗り越えてきた、ということ」です。セッションで、女性経営者、建築士スタッフひとりひとりの発言に、経験者ならではの視点が盛り込まれた工夫や対処方法が数多く提示されました。
こうした業界での議論をふまえ、建築設計業界は先進的な働き方の実現に向け、大きく変わろうとしています。
日本社会は、長らく子育てや介護などの社会問題に対して、家族に頼らざるを得ない状況を許容し、女性の自立や活躍を妨げてきた側面があります。
スパイラルアップ事業で行われたこれらの議論からは、「人びとの生活をデザインする建築士だからこそ実現できた先進的な「働き方」、「暮らし方」があると、多くの関係者は語っています。
当協会では、今後も継続的に多様な建築設計者像が議論しながら、これからの建築界を担う人びとにとっての活気ある職場と未来づくりに取り組んでいきます。

ワークセッションでの議論の様子

A班
B班