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働き方改革とは

全ての働く人に関わりのあるテーマとして注目される「働き方改革」。厚生労働省は、働く人々がそれぞれの事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で「選択」できるようにするための改革と位置付け、2019年4月1日に「働き方改革関連法案」の一部が施行されました。「働き方改革」は大企業だけでなく、日本国内雇用の約7割を担う中小企業・小規模事業者にとっても重要な経営課題となっています。協会では、建築設計界の担い手である建築士の皆さんが多様な働き方を選択でき、一人ひとりが将来に向けてより良い展望を抱けるよう、業界をあげて取り組んでいます。

「働き方改革」がつくる新しい社会、
新しいワークスタイル

「働き方改革」が実現する新しい社会のビジョンとは?厚生労働省は次のように定めています。
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誰もが生きがいを持って、その能力を有効に発揮することができる社会
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多様な働き方を可能とし、自分の未来を自ら創ることができる社会
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意欲ある人々に多様なチャンスを生み出し、企業の生産性・収益力の向上が図られる社会

こうした目標が掲げられる背景には、少子高齢化に伴う生産年齢人口(15歳~64歳)の減少と、それが引き起こす労働力不足に日本が直面しつつあるという状況があります。

労働力不足を解消していく
つのこと
01 働き手を増やす
02 出生率を上昇させる
03 従業員1人あたりの
労働生産性を向上する

これらの3つの達成が必要とされています。社会全体で必要となる取り組みが「働き方改革」です。

長時間労働をなくし、
子育てと仕事を両立できる社会へ

「働き方改革」を実現する上で乗り越えるべき課題について、厚生労働省は「労働施策に関する基本的な事項」として方針を定めています。中でも重要な課題は「労働時間の短縮等の労働環境の整備」です。
下図でまとめられた8つの項目で、あらゆる企業に向けて、整備すべき労働環境の指針を示しています。

労働時間の短縮等の労働環境の整備
1 長時間労働の是正
  • 時間外労働の上限規制、年次有給休暇の時季指定、産業医・産業保健機能の強化等に関する周知徹底・履行確保
  • 年次有給休暇の円滑な取得に向けた環境整備
  • 勤務間インターバル制度の普及促進
  • 労働基準監督官がよるべき行動規範の策定
  • 監督指導等に対する苦情の多様な形での受付
  • 監察官制度の活用による適正な権限行使の徹底
2 過労死等の防止
  • 過労死等の防止に向けた労働行政機関等における対策
  • 調査研究、啓発、相談体制の整備
  • 民間団体の活動に対する支援
3 中小企業等に対する支援・ 監督指導
  • 中小企業等がワンストップで相談できる体制の整備
  • 人材確保や生産性向上に向けた取組の支援
  • 働き方改革推進支援センターを中心とした丁寧な相談・ 支援
  • 中小企業退職金共済制度の加入促進、勤労者財産形 成促進制度の利用促進
  • 労働関係法令の周知、監督指導における中小企業等の 事情に配慮した対応
4 業種等の特性に応じた対策等の推進
  • 自動車運送業・建設業におけるガイドライン等を 活用した長時間労働是正の環境整備
  • 医師における長時間労働是正に向けた検討
  • 鹿児島県・沖縄県の砂糖製造業に対する人材 確保、省力化等に関する支援
5 最低賃金・賃金引上げと生産性向上
  • 年率3%程度を目途とした全国加重平均1,000円 を目指した最低賃金引上げ
  • 中小企業等の生産性向上等の支援
6 産業医・産業保健 機能の強化
  • 長時間労働者に対する面接指導や健康相談等 の企業における労働者の健康管理の強化
  • 産業保健機能の強化
7 安全で健康に働ける労働環境の整備
  • 労働災害防止計画の推進、迅速かつ公正な労 働者災害補償保険制度の実施
8 職場のハラスメント対策 及び多様性を受け入れる環境整備
  • パワーハラスメント対策の周知啓発や強化に向けた検討
  • セクシュアルハラスメント等に係る事業主の措置 義務の履行確保や実効性確保のための検討
  • 職場における性的指向・性自認に関する正しい 理解の促進

日本の企業社会の問題点

特に「①長時間労働の是正」については長きに渡って、日本の企業社会の問題点として指摘されてきました。長時間の残業によって労働生産性を支える働き方は、過労死や過労自殺を生み出しているばかりか、出生率の低下とも大いに関係しています。長時間労働の割合が特に多い30代~40代は、出産・育児のライフステージと重なるためです。

長時間労働を前提とした社会では、出産に伴ってキャリアを中断したり、育児と仕事を両立できず「非出産」という選択をする女性が増えざるを得ません。また長時間労働は男性に対しても、育児や家事に自ら取り組む時間を奪い、若い夫婦の出産・育児へのハードルを上げてきました。男性が職場に長時間拘束されることで、パートナーである妻だけがキャリアを中断し、育児・家事を「ワンオペ」で一手に担っていくという、公正とは言えない家庭状況をも生んできました。

こうした状況を是正するために、働き方改革では「時間外労働の上限規制」「年次有給休暇の円滑な取得に向けた環境整備」「勤務間インターバル制度の普及促進」などの施策を通じて、長時間労働の是正に取り組んでいます。

非正規社員/正規社員の
賃金格差をなくす

非正規社員と正社員との格差を是正し、多様で柔軟な働き方を実現可能にすることも「働き方改革」の大きな課題です。内閣府男女共同参画局の調査によると、平成29年の時点で男性の21.9%、女性の55.5%は非正規労働者です。労働者全体の約4割を、非正規労働者が占めています。

一方で、日本では非正規社員の時給換算賃金は、正社員の約6割ほどしかありません。この賃金格差を埋めることが、働き方改革では求められています。そのため、同じ付加価値をもたらす労働には同一の賃金支払いを義務付ける「同一労働同一賃金」や、非正規雇用労働者のキャリアアップ支援、最低賃金の引き上げといった取り組みを始めています。

非正規の職員・従業員の割合の推移
非正規の職員・従業員の割合の推移 非正規の職員・従業員の割合の推移
主な取り組み
  • 01同一労働同一賃金
  • 02非正規雇用労働者の
    キャリアアップ支援
  • 03最低賃金の引き上げ

多様な人材の活躍促進

また「働き方改革」では「多様な人材の活躍促進」として、女性(特に子育て中の女性)、若者、高齢者、障がいのある人、外国人の就職支援にも取り組んでいます。一人親家庭の親や生活保護受給者、ホームレスなど、その他さまざまな事情や困難を抱える人もその対象です。また育児・介護を行っている人や、疾病の治療中の人も安心して働けるような支援も大きな課題です。

そうした個々人の事情に応じた柔軟な働き方と、高い生産性を両立していくには、非正規雇用労働者の待遇が今よりも改善されていく必要があります。非正規社員の時給換算賃金を、正社員の約6割という現状から、欧米並みに8割まで引き上げることが目標として掲げられています。

働き方改革は会社の成長にも
欠かせない

「働き方改革」は大企業だけじゃない!

「働き方改革関連法案」の施行後もなお、「働き方改革」は大企業だけの経営目標と見なされる風潮がありました。しかし中小企業・小規模事業者こそ、これからの「働き方改革」が重要なのです。
ここまで概要を紹介してきた「働き方改革」の実施は、魅力ある職場づくりにつながるからです。魅力ある職場は「人材の確保→業績の向上→利益増」という好循環を可能とします。
厚生労働省『働き方改革 特設サイト』

中小企業向けにはさまざまな助成金制度

中小企業向けにはさまざまな助成金制度も用意されています。例えば、非正規雇用労働者のキャリアアップのため、正社員化・処遇改善の取り組みを実施した事業主が活用できる「キャリアアップ助成金」。そのほか、生産性向上のための設備投資などを行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合に、必要な費用を一部助成する「業務改善助成金」。時間外労働の上限設定に取り組む中小企業事業主に対して、必要な費用を一部を助成する「時間外労働等改善助成金」などがあります。

求職者としては、こうした施策に前向きに取り組んでいるかどうかも、職場の魅力を探るポイントとなってくるでしょう。